長い間、疑問に感じていることがありました。
私は人を困らせたいわけではありません。
むしろ逆でした。
少しでも楽になればいい。
少しでも安心できればいい。
少しでも喜んでもらえたらいい。
そんな気持ちで、人との関わり方を工夫をしていました。
ところが、不思議なことが起きるんです。
がんばるほど、相手が苦しそうになる。
支えるほど、相手が不安定になる。
関係を良くしようとするほど、こじれていく。
最初は理由がわかりませんでした。
でも長い時間をかけて観察しているうちに、少しずつ見えてきたものがあります。
今回はそんな研究記録です。
私は問題を解決したかったわけではない
振り返ると、私は昔から工夫することが好きでした。
限られた条件の中で、
- どうしたらもっと楽しくなるだろう
- どうしたらもっと快適になるだろう
- どうしたらバランスがとれるだろう
そんなことを考えるのが好きでした。
だから 子育て でも工夫しました。
暮らし も工夫しました。
夫婦関係 も工夫しました。
私は相手を変えようとしていたつもりはありませんでした。
ただ、今より少し楽になるやり方、楽しくなる方法を探していたのです。
なぜか同じ現象が繰り返された
ところが、あるときから不思議なことに気づき始めます。
私が工夫を重ねるほど、相手が苦しそうになっていくように見えるのです。
お金の不安がある人には、お金の負担を減らそう と工夫しました。
忙しい人には、休みやすい環境 を作りました。
疲れている人には、安心して休める空間 を作りました。
それなのに、
なぜか相手は楽にならない。
むしろ、
- 不安が強くなる
- コントロールが増える
- 圧力が強くなる
そんなことが何度も起きました。
私はそこで初めて、
「 これは性格の問題ではないのかもしれない 」
と思うようになりました。
善意なのにうまくいかない
一般的には、
- 愛情があればうまくいく
- 優しさがあれば伝わる
- 理解すれば関係は良くなる
そんなふうに語られることがあります。
もちろん、それが役立つ場面もあります。
でも私は 違う現象 を何度も見てきました。
- 善意なのに うまくいかない
- 優しさなのに こじれる
- 助けたいのに 苦しくなる
それは悪意ではありません。
むしろ逆です。
だからこそ、この問題ははっきりと見えにくいのです。
私は相手の課題まで引き受けていた
今振り返ると、少し見えてくるものがあります。
私は工夫することが得意でした。
だから 多くの問題を工夫で乗り越えられてしまった のです。
でも、本来は相手自身が向き合う必要のある課題 まで、私が 先回りして解決してしまっていた ということもあったのかもしれません。
もちろん当時はそんなつもりはありませんでした。
ただ 良かれと思っていただけ です。
しかし結果としては、こんな流れを作ってしまうことがあったのかもしれません。
バランスを保つために努力
がんばる必要がなくなる
もっとがんばる必要がでてくる
自信も失っていく
そんな流れが生まれていた可能性があります。
人にはそれぞれの「文脈」がある
最近研究していくなかで、強く感じることがあります。
人にはそれぞれの 文脈 があります。
- どんな環境で育ったのか
- 何を信じてきたのか
- 何を恐れているのか
- 何に安心を感じるのか
それは 本人にしか歩けない道 です。
どれだけ 愛情 があっても、
どれだけ 理解 していても、
相手の代わりに歩くことはできません。
私は長い間、
その 境界線の大切さ がよくわかっていませんでした。
でも何度も同じ現象を見たことで、
少しずつ理解できるようになっていきました。
理解することと背負うことは違う
この研究の中で、一番大きな発見だったかもしれません。
私は今でも人を理解したいと思っています。
事情を知りたいと思います。
何が起きているのかを見たいと思います。
でも、
- 理解することと背負うことは違う
- 理解することと代わりに歩くことは違う
ここがとても大切でした。
私は私
相手は相手
その上で関わる
その距離感が見えてから、人間関係はずいぶん楽になりました。
おわりに
昔の私は、
もっとればがんば良くなる と思っていました。
もっと工夫すれば伝わる と思っていました。
もっと理解すれば関係は良くなる と思っていました。
でも今は少し違います。
人にはそれぞれの文脈があります。
私の力で変えられることもあります。
変えられないこともあります。
そして 相手の人生は、相手のもの 。
私がバランスをとらなくていいんです。
だから最近は、
良くしようとがんばるよりも、
自分や相手に 何が起きているのか を観察するようになりました。
その方が不思議なくらい自然に関係が見えてきます。
この現象を何度も見てきたからこそ、
私は人間関係の力学 という研究に強く惹かれているのかもしれません。
