境界線があると感謝が育つ

誰かが自分のために喜んでくれたらうれしい。

苦しいときに寄り添ってくれたらありがたい。

それはとても自然なことだと思います。

私もそうです。

人の優しさに救われたことは何度もあります。

でも最近、人間関係を観察していて、ひとつ面白いことに気づきました。

同じように「ありがとう」と言っていても、心が軽いときと重いときがあるのです。

その違いは何だろう。

そう考えていたとき、ある共通点が見えてきました。

もくじ

「ありがとう」のあとに何が続くのか

例えば、誰かが自分のことを心配してくれたとします。

ありがたいなと思う。

ここまでは同じです。

でもそのあとに、

「もっと分かってほしい」

「もっと気にかけてほしい」

そんな気持ちが続くことがあります。

もちろん、それが悪いわけではありません。

人は安心したい生き物だからです。

ただ、その状態では「ありがとう」が少し苦しくなります。

なぜなら、感謝だけでは終われないから 。

一方で、

心配してくれてありがとう。

それだけで終わるときもあります。

喜んでくれてありがとう。

その気持ちがうれしい。

ただそれだけ。

そんなときの感謝は、とても軽やかです。

私が大事にしていること

私はあまり体調を崩したり寝こんだりしたことがありませんでした。

だから娘は、私が不安定になる状況に慣れていなかったんです。

ある日、体調を崩して不安定な私を見た娘が、必要以上に心配していたことがありました。

そのとき娘には、

「 私も人間だから、しんどさを感じる時間もちょうだい 」

と伝えました。

ネガティブな経験が少ないことは、いいことばかりではありません。

グレーの時間をやり過ごすことも、ときには大切なんです。

また、パートナーにも、

「 私の不安定は自分で何とかできるから、必要以上に気にしないで。 」

と伝えたことがあります。

もちろん心配してくれることはうれしいし、ありがたいとも思う。

でも、その優しさを受け取りながらも、自分の 感情の責任 までは渡したくなかったんです。

境界線をはっきりと示すのは、相手を遠ざけたいからではありません。

むしろ逆です。

相手の優しさを、そのままの形で受け取りたかったから です。

「 相手のおかげでバランスが取れた 」と安心することにはリスクがあります。

相手に自分のバランスの責任を負わせてしまうこと でもあります。

そうすると、次に自分が不安定になったとき、「 相手に何とかしてほしい 」という 期待 が自然に立ち上がるようになる。

期待は取扱注意の感情 です。

期待通りになると、人はそれを当たり前だと感じやすくなります。

そして期待が外れると、

  • がっかりする
  • 失望する
  • 怒りがわく

そんな流れが自然にできていきます。

それが積み重なると、人間関係は少しずつ不安定になります。

相手が悪いわけでも、自分が悪いわけでもありません。

ただ、期待が 安心の土台 になってしまうと、関係は揺れやすくなるのです。

感謝が育つ場所

こうしたことを繰り返し観察しているうちに気づいたことがあります。

それは、

相手の優しさを受け取ること と、

相手に自分の安心を任せること は、

似ているようで全く違うということです。

以前の私は、

こんな違いがあることなんて、考えたこともありませんでした。

でも人間関係でいろんな困難を経験してから、

こういうことを考えることの大切さを実感したんです。

  • 相手が心配してくれる
  • 相手が喜んでくれる
  • 相手が支えてくれる

それはとても素敵なこと。

こういう経験があるからこそ、人間関係は豊かになると思います。

自分の人生や感情の責任は自分で持つ。

そんな意識があると、

相手がしてくれることが当たり前ではなくなります。

  • 心配してくれることも
  • 喜んでくれることも
  • 支えてくれることも

どれも 相手が自分の意思で差し出してくれているものだ と見えるようになる。

それが自然で質のいい感謝の気持ちにつながります。

すると不思議なことが起きます。

人の優しさを、以前より素直に受け取れるようになるんです。

「もっとこうしてほしい」

「もっと分かってほしい」

そんな気持ちがまったくなくなるわけではありません。

でも、それとは別に、

純粋な感謝がちゃんと存在できるようになる。

  • 心配してくれてありがとう
  • 喜んでくれてありがとう
  • 応援してくれてありがとう

その気持ちがうれしい。ただそれだけ。

余計なものが少しずつ減っていくと、

ありがとうはとても静かで、あたたかいものになります。

私は最近、

これが人との間に 適度な距離がある状態 なのかもしれないと思うようになりました。

近すぎない。

遠すぎない。

相手の優しさを受け取りながら、

相手の人生まで背負わない。

自分の人生も預けない。

心の仕組み研究所では、

こうした状態を「 境界線 」と呼んでいます。

研究のまとめ

感謝が苦しくなることがあります。

感謝しているはずなのに、なぜか満たされないことがあります。

そんなときは、感謝が足りないのではなく、感謝以外の何か が混ざっているのかもしれません。

  • もっと分かってほしい
  • もっと認めてほしい
  • もっと安心したい

そうした気持ちがあること自体は自然なことです。

だから否定する必要はありません。

ただ、それがあることに 気づける と、人間関係は少し楽になります。

そして 相手の優しさを受け取る力 も育っていきます。

境界線 とは、人を遠ざけるためのものではありません。

ありがとうを、ありがとうのまま受け取るための場所 なのだと思います。

もくじ