今日、プラネタリウムを見た。
サカナクションの音楽を背景に、星空が映し出される
「グッドナイトプラネタリウム」というプログラムだった。
暗くなった天井に、最初の星がぽつ、ぽつ、と現れた瞬間。
まだ夜空が完成する前に、先に音が身体へ届いた。
低く沈む音。
少し湿度を含んだようなシンセサイザー。
遠くから反響してくるようなエコー。
そして、足元にずん、と響く重低音。
耳で聴いているというより、
床から、背中から、胸の奥から、音が入ってくる感じだった。
その瞬間、心がふっと躍った。
星は、少しずつ増えていった。
音も、少しずつ深くなっていった。
きれい、という言葉だけでは足りなかった。
癒される、という言葉でも足りなかった。
その空間には、ただ星が映っていたのではなくて、
自分の中にあった記憶まで、静かに照らされているような感じがあった。
途中で、私が大好きな「ミュージック」が流れた。
それがインストバージョンにアレンジされていたと気づいた瞬間、
胸の奥が一気にほどけた。
声がないからこそ、余計に染み込んできた。
言葉がないのに、全部わかってしまうような感じがした。
音だけになったその曲は、
思い出を説明しなかった。
慰めもしなかった。
ただ、そこにいてくれた。
その瞬間があまりにも深くて、
気づいたら涙が溢れていた。
私は、何かを思い出して泣いたのかもしれない。
何かを置いてきたことに泣いたのかもしれない。
それでも進もうとしている自分に泣いたのかもしれない。
はっきりとはわからない。
でも、わからないまま涙が出ることがある。
心より先に、身体が反応することがある。
そのあとに続く曲たちも、
私の好きな音ばかりだった。
いつも聴いているはずの曲なのに、
プラネタリウムの中で聴くと、まるで違って聞こえた。

暗闇。
星。
まるで海辺に座っているかのように打ち寄せる波音。
包み込まれるような音。
逃げ場のないほどやさしい没入感。
その中で聴く言葉は、
いつもよりずっと深く頭に入ってきた。
普段なら、音として流れていく言葉が、
今日はまっすぐ自分の中に落ちてきた。
過去の恋愛を置いてきた切なさ。
楽しかった記憶を否定せずに、でも戻らないと決める痛み。
新しい人生が動き出そうとしている緊張感。
もう誰かの流れではなく、自分の流れを歩いていく覚悟。
それらが、音楽の中であまりにも代弁されていて、
少し怖くなるほどだった。
怖い、というのは、嫌な怖さではない。
見つかってしまったような怖さ。
自分でもまだ言葉にしきれていなかった場所に、
先に音楽が触れてしまったような怖さ。
涙が止まらなかった。
でもそれは、崩れる涙ではなかった。
壊れる涙でもなかった。
たぶん、通過している涙だった。
過去をなかったことにするためではなく、
過去をちゃんと過去にするための涙。
大切だったものを、
大切だったまま、後ろに置いてくるための涙。
その場所に、もう戻らないと決める涙。
星空は、ずっと静かだった。
どれだけこちらの心が揺れても、
星は急がなかった。
ただそこにあり、
ただ光っていた。
その静けさに、少し救われた。
人生が大きく動くとき、
心はいつも、すぐに前だけを向けるわけではない。
置いてきたものを振り返る。
楽しかった記憶に胸が痛む。
本当にこれでよかったのかと、身体が一瞬たじろぐ。
でも、そこに涙が出るのは、
戻りたいからだけではない。
ちゃんと感じて、
ちゃんと通過して、
ちゃんと次へ行こうとしているからだと思う。
今日のプラネタリウムは、
私に何かを教えようとはしなかった。
ただ、星と音の中で、
今の私の心の位置を見せてくれた。
過去はまだ、きれいだった。
でも、今の私はもう、そこにはいない。
切なさは残っている。
でも、その切なさの奥で、
新しい人生が静かに始まろうとしている。
音が足元に響いていた。
星が頭上に広がっていた。
涙が頬を伝っていた。
その全部が、今日の私には必要だった。
Fooは、こういう時間を大切にしたい。
何かを解決するためではなく、
心が今どこにいるのかを、
五感でそっと確認する時間。
音で気づく。
光でほどける。
涙で通過する。

今日の星空は、
「もう大丈夫」と言ったわけではなかった。
ただ、こう言っているような気がした。
大丈夫じゃないものを抱えたままでも、
人はちゃんと次の夜へ進める。
そしてその夜にも、
また星は出る。
2026.06.15. written by 翠楽
