期待と結果がズレやすい理由

前回の研究記録では、善意で努力するほど苦しくなるアイロニーについて書きました。

善意そのものが問題なのではなく、その善意がどんな流れの中で使われているのかが見えにくくなること。
そこに、反転の入口があります。

今回は、その中でも特に大切な
期待と結果のズレ
について見ていきます。

人は、ただ闇雲にがんばっているわけではありません。

その努力の奥には、たいてい「 こうなれば少し安心できるはず 」という期待があります。

関係がよくなるかもしれない。
自信が持てるかもしれない。

そう思えるから、人はもう少し努力してみようとします。

けれど、実際に結果が出たあと、思ったほど満たされない と思うことがあります。

ここに、心の仕組みとして見ておきたいズレ があります。

もくじ

人は、結果そのものだけを求めているわけではない

表面だけを見ると、人は目に見える結果を求めているように見えます。

結果を出し、相手に喜ばれることでこの関係を守りたい。
そう願うのは、とても自然なことです。

けれど、もう少し奥を見ると、人が求めているのは結果そのものだけではありません

大切なのは、その結果によって、どんな感覚を得られると思っていたのか です。

結果が出れば安心できると思ったり、相手が喜んでくれれば大丈夫だと期待したりする。
ちゃんとできたと思えれば、自分を少し信じられる気がする。

人は結果そのものだけでなく、その先にある安心や納得を求めて動いている ことがあります。

期待が強くなると、結果へ急ぎやすくなる

期待には、人を動かす力があります。

「この先に安心があるはず」と思えるから、人は前に進めます。
ただ、その期待が強くなるほど、心は結果へ急ぎやすくなります。

本当は途中で感じていた疲れや違和感、納得しきれていない部分があった。

でも、そこを確認する前に「 ここまで行けば大丈夫なはず 」と、安心できるであろう条件を満たすほうへと進んでしまうことがあります。

これが、文脈とばし です。

文脈が飛ぶと、結果が自分の中に入ってこない

結果が出ても満たされないとき、結果が足りなかったわけではないことがあります。

結果は出ていて、満足できる条件はそろった。
それでも、自分の中に思ったほどの安心や満足感が残らない。

その理由のひとつは、結果に至るまでの文脈が、自分の感覚とつながっていない ことです。

  • 本当は疲れていたのに、そのまま進んだ
  • 本当は違和感があったのに、見ないことにした
  • 本当は納得していなかったのに、場に合わせた
  • 本当は怖かったのに、大丈夫なふりをした

こうしたものを後回しにしたまま結果だけが出ると、外側には成果があっても、内側には実感が残りにくくなります。

「 できた 」のに「 自分のもの 」にならない

文脈が飛ぶと、結果と自分の間に距離ができます

できた
でも、自分の力でできた気がしない

相手に喜ばれた
でも、なぜか疲れだけが残る

この状態では、結果が出るほど不思議な感覚が増えます。

  • できているはずなのに、なぜ自信にならないのか
  • 評価されているのに、なぜ不安なのか
  • がんばったのに、なぜ満たされないのか

こういうナゾが生まれます。

でもこれは、中身がないからではありません。

結果 と自分の 文脈 が、まだつながっていない状態です

期待と結果のズレ

ここで起きているのが、期待と結果のズレ です。

期待結果
安心疲れ
報われる虚しさ
自信次への不安
満足不満
安定不安定

この期待と結果のズレが大きくなるほど、人は混乱します。

  • こんなにやったのに、なぜ
  • うまくいったはずなのに、なぜ
  • ちゃんとできたのに、なぜ

そして、その答えを探そうとして、さらにがんばる方向へ進みやすくなります。

さらにがんばるほど、ズレが大きくなることがある

期待と結果がズレたとき、人は原因を探します。

何が足りなかったのか。
もっとできることはなかったか。

そう考えると、また結果を取りに行きます。

けれど、文脈を確認しないまま努力を増やすと、ズレはさらに大きくなる ことがあります。

  • 結果は増える
  • 役割も増える
  • 周りからの期待も増える

でも、自分の感覚や納得が入らないまま進むので、内側はますます置き去りになります。

すると、外側では条件は満たしているのに、内側では満たされない状態が続きます。

満たされなさは、結果不足とは限らない

満たされなさを感じると、人はつい結果を増やそうとします。

成果や評価、誰かの役に立つこと、自信を持つこと。
その先に、満たされる感覚があるように思えるからです。

でも、満たされなさの背景に 文脈とばし がある場合、結果を増やしても根本的には満たされにくいことがあります。

必要なのは、結果を増やすことではなく、結果と自分の文脈をつなぎ直すこと です。

そのとき、自分が何を感じ、どこで無理をしていたのか。
どんな期待に向かって動き、何を選んできたのか。

そこが見えてくることで、結果は少しずつ自分の中に入ってきます。

文脈が戻ると、結果の意味が変わる

文脈が戻ると、同じ結果でも意味が変わります

ただがんばった結果ではなく、
自分が何を大切にして動いたのか が見えてくる。

ただ疲れた出来事ではなく、
どこで無理をしていたのか が分かってくる。

ただ報われなかった経験ではなく、
何に期待し、どこでズレたのか が見えてくる。

ただ自信がない状態ではなく、
自分の感覚と結果がまだつながっていなかった と分かってくる。

そうすると、問題は少しずつ扱える形になります。

謎だったものが、流れとして見えてくるからです。

おわりに

いい結果を期待してがんばったのに、思ったほど満たされない。

その背景には、期待と結果のズレ があります。

人は、結果そのものだけではなく、その結果によって得られるはずの安心や納得 を求めています。

けれど、安心できる結果へ急ぐあまり、自分の感覚や途中の文脈を飛ばしてしまうことがあります。

文脈が飛んだまま結果だけが積み上がると、外側ではできているように見えても、内側には実感が残りにくくなります。

だから、もっとがんばる前に見たいものがあります。

どんな期待に向かっていたのか。
どんな感覚を後回しにしていたのか。

そこに光を当てること。

それが、がんばったのに満たされない謎をほどく入口になります。

心の仕組み研究所では、こうした期待と結果のズレを責めずに見ていきます。

結果だけではなく、そこに至る文脈を取り戻すために。
そして、がんばったことが自分の中にちゃんと入ってくるように。

もくじ